アメリカの経済学者でベストセラー作家のジェフリー・サックスは、ドルの覇権の終焉は近く、中央銀行デジタル通貨(CBDC)が国境を越えた決済の基礎になると述べている。サックスにとって、地政学的武器としてのドルの乱用は、今後10年でドルが終焉を迎える要因のひとつである。
サックス、今後10年でドル覇権は終焉すると予測
アメリカの経済学者であり、コロンビア大学教授、ベストセラー作家でもあるジェフリー・サックスが、世界の支配的通貨としてのドルの地位の終焉についての見解を発表した。モスクワに本部を置くシンクタンク、バルダイ・ディスカッション・クラブの第20回年次総会での発言で、サックス氏は、現在国境を越えた決済の基準となっている自国通貨が誤った使われ方をしているため、米ドルの覇権は今後10年で終焉を迎えるかもしれないと説明した。
サックスはこう述べている:
ドルに支配された国際金融システムは終焉を迎えつつあり、それは今後10年のうちに起こるだろう。
さらにサックスは、このプロセスは現在進行中であり、第二次世界大戦後は世界の30%の商品を生産していたアメリカ経済は、世界の生産量の15%しか占めていないと強調した。
サックスは以前にも、ドルの覇権が衰退したのは、ロシア、ベネズエラ、イランといった国々に対する武器化の結果だと述べていた。サックスによれば、アメリカは「地政学的な目標を達成するために金融システムを利用することに依存するようになった」のだという。
CBDCの台頭
サックスは、他の国々が今後アメリカを凌駕し続けるにつれて、この割合は減少し続けるだろうと詳述している。とはいえ、サックスに言わせれば、現在利用可能な標準通貨のどれもがドルの後継通貨になることはない。
これについて、サックスはこう宣言した:
中央銀行のデジタル通貨が決済の基礎になるだろう。
中央銀行デジタル通貨(CBDC)とは、中央銀行が発行する今日の不換紙幣に相当するデジタル通貨であり、国境を越えた決済サービスの向上、トレーサビリティの向上、管理の強化など、発行者に一連のインセンティブを提供する。7月に発表された国際決済銀行(BIS)の調査によると、決済能力を向上させるため、2030年までに24の中央銀行がCBDCを導入するという。
さらに、米国を拠点とするシンクタンク、アトランティック・カウンシルによると、世界の国内総生産(GDP)の98%を占める130カ国がCBDCの導入を検討しているという。